事務所便り

2025年10月号

● 令和7年度税制改正

   ~退職所得控除の調整規定

 確定拠出年金の老齢給付金を一時金で受け取った場合、退職所得として課税されます。その後、一定の期間内に他の退職金を受け取った場合、退職所得控除の調整をする必要がありますが、令和7年度税制改正で、対象となる期間が変わりました。

 今回は、退職所得控除の仕組みや、改正された調整規定について見ていきます。(※)。
※本稿は一般退職手当の場合を前提ととした内容になっています。勤続年数等によっては計算方法が異なる場合がありますのでご注意ください。

退職所得とは
 退職所得とは、退職により勤務先から受け取る退職手当などの所得をいいます。退職所得には、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金や、確定拠出年金法に規定する企業型年金規約や個人型年金規約に基づいて老齢給付金として支給される一時金なども含まれます。
 退職所得の金額は、原則として収入金額から退職所得控除額を差し引いた金額に2分の1乗じて計算します。税額は、原則として他の所得と分離して所得税額を控除します。【図1参照】
 退職手当等を支払うときは、退職者から提出された「退職所得の受給に関する申告書」に記載されている勤続年数を基に源泉徴収税額を計算して、所得税などを源泉徴収します。申告書の提出がない場合は、支給額に20.42%の税率を乗じて計算した税額を源泉徴収します。

確定拠出年金とは
 確定拠出年金は、提出された掛金とその運用益との合計額を基に、将来の給付額が決定する年金制度です。掛金を事業主が拠出する企業型確定拠出年金(企業型DC)と、加入者自身が拠出する個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。
 原則は、60歳に達した場合に老齢給付金として給付を受けることができますが、一定の障害状態になった場合などにも、給付を受けられることがあります。
 税額の計算にあたり、確定拠出年金を年金として受給した場合は公的年金等控除、一時金として受給した場合は退職所得控除を適用することができます。

2か所以上からの退職金
 退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであり、退職後の生活の原資に充てられることなどから、退職所得控除を設けることや、他の所得と分離して課税されることで、税負担が軽くなるように配慮されています。
 ただし、同じような時期に2ヵ所以上から退職金等の支払を受ける場合には、退職所得控除の調整が必要になります。
 退職手当等(確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金以外)の支払を受ける年の前年以前4年内に他の支払者から支払いを受けた退職手当等がある場合、退職所得控除の額について調整計算を行います。
 具体的には、本年分のの退職手当等の勤続年数に基づいて算出した退職所得控除から、勤続期間が重複している機関の年数に基づいて算出した退職所得控除額相当額を控除した残額になります(※)。【図2参照】
※前の退職手当等の支払額がその退職手当等の勤続期間に基づいて計算した退職所得控除額に満たない場合は、前の勤続期間を調整して、重複期間を計算します。

改正の内容
 確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金とその他の退職金の支払いを受ける場合も、退職所得控除の調整規定の対象となりますが、その支給を受ける順番によって重複排除に係る調整期間が異なります。
①「先に退職金の支給を受ける場合」は、その受給が老齢一時金の受給年以前19年内の場合に調整規定の対象となりますが、②「先に老齢一時金を受給する場合」は、受給年以前4年内とされていました。
 令和7年度税制改正では、課税の公平性の観点から、前記②のケースについて見直しが行われました。これにより、退職金の支払いを受ける年の前年以前9年内に老齢一時金の支払いを受けている場合には、退職所得控除額の調整計算をすることになります。【図3参照】
 この改正は、令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払いを受けている場合であって、同日以後に支払いを受けるべき退職手当等に適用されます。

       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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