事務所便り

2023年 2月号

●個人事業主、自営業者等の「令和4年分確定申告」

 令和4年分の確定申告の時期が到来しました。
 今回は申告の際に注意する点等について確認していきます。

1.申告期限と納期限
 令和4年分の所得税等の申告・納付期限は令和5年3月15日になります。ただし、自己名義の預貯金口座からの口座引き落とし(振替納税)の手続きをしている場合はの引落日(振替日)は令和5年4月24日です。
 なお、令和4年分の消費税等の申告・納付期限は令和5年3月31日、振替納税の振替日は令和5年4月27日となります。
2.振替納税の手続き
 令和4年分の申告から振替納税を行う場合は、利用しようとする国税の納期限までに、「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」(振替依頼書)を作成の上、納税地を所轄する税務署又は振替依頼書に記載した金融機関へ提出するか、e-Taxにより依頼書を提出する必要があります。
 なお、預貯金口座の変更依頼や振替納税の取りやめ依頼がない場合、所轄の税務署が変更とならない場合は、自動的に次回以降も振替納税が行われることになります。また、残高不足等で振替納税ができない場合には、法定期限の翌日から延滞税がかかるので注意が必要です。
3.令和4年分からの変更点
⑴申告書の様式
 令和4年分の確定申告から、医療費控除や住宅ローン控除などの適用のために使用する申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されています。
住宅ローン控除制度の見直し
 省エネ性能等の高い認定住宅等(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅)につき、新築住宅等・既存住宅ともに、借入限度額が上乗せされました。一方、実際のローンの借入金利が改正前の控除率である1%を下回るケースが多いことから、控除率が0.7%とされています。
 また、適用対象者の所得要件が合計所得金額2000万円以下(改正前3000万円以下)となり、合計所得金額1000万円以下の者は、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅の床面積要件が40㎡以上(原則50㎡以上)に緩和されました。
4.業務に係る事業所得と雑所得の区分について
 例えば、一般的なサラリーマンが副業を行った場合、その所得は事業所得、雑所得のどちらに該当するか問題が生じます。
 事業所得に該当する場合は、損失が生じたときは給与所得との損益通算が可能となります(雑所得の場合は損益通算が認められていません)。
 また、青色申告の届出を行うことにより、青色申告特別控除の適用を受けることもできます。
 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動を、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定することになりますが、令和4年10月に、所得税気泡通達の改正が行われ、「事業所得」と「業務に係る雑所得」の区分が明確化されました。
 具体的には、その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除いて、その取引を記録した帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当することとされています(なお、事業所得の場合は、たとえ白色申告であっても、その取引を記録した帳簿書類の保存が必要となります)。
 したがって、その所得に係る収入が300万円以下の場合は、記帳・帳簿書類の保存がされていないことにより、事業所得に該当しないという判断がされることになります。

5.必要経費に係る注意点
 必要経費とは、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額、また、その年に生じた販売費・一般管理費、その他の業務上の費用の額とされています。
 ここでは、特に注意すべき点について確認します。
⑴修繕費と資本的支出
 固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額は、修繕費として支出した時の必要経費となります。
 一方、使用可能期間を延長させ、または価値を増加させるものである場合は「資本的支出」となり、減価償却資産として減価償却の対象とされます。ただし、資本的支出であっても20万円未満である場合などは、修繕費とすることができます。
⑵親族に支払う給料、家賃等
 事業主が生計を一にする親族に、給料(青色専従者給与を除きます)・家賃・借入金利子などを支払っても、その金額を必要経費に算入することはできません。
 ただし、例えば、その親族の所有する建物を事業の用に供した場合には、その建物に係る固定資産税・減価償却費などは、その事業主自身の必要経費に算入することができます。
⑶必要経費と家事関連費の区分
 家事関連費とは、家事上の経費に関連する経費のことで、具体的には、自宅兼店舗に係る固定資産税、減価償却費、家賃、火災保険料、事業と家事共用の水道光熱費、電話代、インターネット回線費用、消耗品費、車両に係る費用などがあります。これらの費用については、業務上、直接費用である部分を明らかに区分するできる場合は、その部分の金額のみ必要経費に算入することができます。
 必要経費部分と家事費部分の区分については、実務上は明確な基準が設けられていません。したがって、次のような判断を行い、必要経費部分を算定することが考えられます。
①自宅兼店舗に係る費用…事業用部分と自宅部分の床面積により区分
②水道光熱費…事業用部分の使用面積割合、コンセントの数、その他客観的な指標により区分
③電話代、インターネット回線費用、パソコン購入に係る費用…事業用部分の利用明細、事業に係る使用時間などにより区分
④車両に係る費用…事業に係る走行距離、使用日数などにより区分
6.新型コロナウイルス感染症に係る支援金等収入の取扱い
 新型コロナウイルス感染症の影響により、令和4年も収入が減少したことに対する補償や、必要経費の補てんを目的として支給される、国の事業復活支援金、一時支援金、月次支援金や、地方自治体の支援金などを受給された方も多いのではないでしょうか。
 これらの金額は、所得税の課税対象となるので計上もれのないようにご注意ください。
 なお、その収入の計上時期は、実際に入金された日ではなく、支給決定時や、支給対象となる経費を支出した時になります。
 誤った申告を行った場合は、修正申告や更正処分により追徴課税が生じ、また、例えば金融機関から融資を受ける際に、不利になるケースなども考えられますのでごちゅういください。 

       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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