事務所便り

2012年 6月号

● 税  務 ― 社会保障・税一体改革のポイント

 年金・医療・介護など増大する社会保障費を踏まえ、持続可能な社会保障制度の構築とその財源確保
及び財源健全化に対するための「社会保障・税一体改革」が、現在、我が国が直面する最大のテーマと
なっています。そこで、一体改革のうち、主に税制抜本改革事項を中心にそのポイントを整理しました。

1 消費税
(1) 税率の段階的引上げ
   ① 平成26年 4月1日より 8%(内、地方消費税分1.7%)
   ② 平成27年10月1日より10%(内、地方消費税分2.2%)
     また、引上げが実施される場合、工事の請負等については経過措置が設けられます。
(2) 課税の適正化
   ① 事業者免税点制度
   資本金1,000万円未満の新設法人に関する免税点制度について、5億円超の課税売上高を
   有する事業者が直接または間接に支配する法人(親族、関連会社を含めた資本の持分比率が
   50%超の会社)を設立した場合には、その設立された法人の設立当初2年間については、
   課税事業者とするなど現行の資本金1,000万円以上の新設法人に対する措置と同様の措置が
   講じられます。
   この改正は、平成26年4月1日以後に設立される法人に適用されます。
   ② 簡易課税制度
   簡易課税制度のみなし仕入率については、実際の仕入率を大幅に上回っている業種がある
   ことから、今後の実態調査を踏まえ、見直しが行われます。
   ③ 中間申告制度
   中間申告義務のない直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を含む)が60万円以下の
   事業者のうち、自主的に中間申告を行う意思を有する事業者について、任意の中間申告
   (年1回・半期)を可能とする制度が導入されます。
   この改正は、平成26年4月1日以後に開始する課税期間に係るものに適用されます。

2 個人所得課税・税率見直し
   平成27年分の所得税から課税所得5,000万円超の所得税率が、40%から45%に引き上げら
  れます。

3 相続税の見直し
(1) 基礎控除の縮小
   ① 定額控除額が5,000万円から3,000万円に縮小されます。
   ② 法定相続人比例控除額が1,000万円から600万円に縮小されます。
(2) 死亡保険金に係る非課税限度の法定相続人の範囲限定
   現行は、500万円に法定相続人の数を乗じた金額ですが、改正では、法定相続人の範囲を、
   未成年者、障害者または相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限定されます。
(3) 税率構造の見直し
   最高税率が50%から55%に引き上げられます(図表1)。

[図表1]相続税の税率構造

  現行 改正案
1,000万円以下の金額 10% 同左
3,000万円以下の金額 15% 同左
5,000万円以下の金額 20% 同左
1億円以下の金額 30% 同左
2億円以下の金額 40%
3億円以下の金額 40% 45%
3億円超の金額 50%
6億円以下の金額 50%
6億円超の金額 55%

(4) 未成年者控除・障害者控除の引上げ
   ① 未成年者控除…20歳までの1年につき10万円(現行6万円)
   ② 障害者控除……85歳までの1年につき10万円(現行6万円)、特別障害者は20万円
     (現行12万円)以上の改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得
     する財産に係る相続税について適用されます。

4 贈与税の見直し

(1) 税率構造の見直し
   ① 20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率が新設されます。
   ② ①以外の場合の最高税率が50%から55%に引き上げられる一方、税率区分が
     8段階(現行6段階)とされ、贈与額によっては税率が引き下げられます(図表2)。

[図表2]20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産に係る贈与税の税率構造

  現行 改正案
200万円以下の金額 10% 同左
300万円以下の金額 15%
400万円以下の金額 20% 15%
600万円以下の金額 30% 20%
1,000万円以下の金額 40% 30%
1,000万円超の金額 50%
1,500万円以下の金額 40%
3,000万円以下の金額 45%
4,500万円以下の金額 50%
4,500万円超の金額 55%

(2) 相続時精算課税制度の適用要件の見直し
   ① 受贈者の範囲に「20歳以上である孫」が追加されます。
   ② 贈与者の年齢要件が、六〇歳以上(現行六五歳以上)に引き下げられます。
  以上の改正は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する贈与税について適用されます。

上記以外の贈与財産に係る贈与税の税率構造

  現行 改正案
200万円以下の金額 10% 同左
300万円以下の金額 15%
400万円以下の金額 20% 15%
600万円以下の金額 30% 20%
1,000万円以下の金額 40% 30%
1,000万円超の金額 50%
1,500万円以下の金額 40%
3,000万円以下の金額 45%
3,000万円超の金額 50%

―減価償却資産の定率法の償却率改正―
 平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産の定率法の償却率が、定額法の償却率を2.5倍
した償却率(250%定率法)から、定額法の償却率を2倍した償却率に(200%定率法)に引き下げられ
ました。これに伴い、改定償却率及び保証率についても改正されています。
 1. 定率法の償却率
   定率法の償却率は、次のようになります。
   ① 平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した資産
     …250%定率法の償却率
   ② 平成24年4月1日以後に取得した資産
     …200%定率法の償却率
    なお、特例措置により、改正事業年度(平成24年4月1日前に開始し、同日以後に終了
   する事業年度)に取得した資産については、平成24年4月1日以後に取得したものも
   含めて全て250%定率法により償却することもできます。
    また、「200%定率法の適用を受ける旨の届出書」を所轄税務署長に提出することに
   より、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得した資産についても、
   改正事業年度又は平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度以後の償却限度額の
   計算について、200%定率法により償却することができます。
 2. 資本的支出を行った場合
   平成24年4月1日以後に資本的支出を行った場合には、その資本的支出による追加償却
   資産については200%定率法により償却します。また、平成24年4月1日以後に行った
   資本的支出による追加償却資産と平成24年3月31日以前に取得した旧減価償却資産の
   帳簿価額の合計額を取得価額とする一の資産を新たに取得したものとして償却することは
   できないこととするなど、所要の措置が講じられました(合算の特例の適用から除外)。

―確定申告を間違えたとき―
 確定申告の期限後に、申告した内容の間違いがあったときには、次の方法で訂正します。
 ①納める税金が多かったときなど
  誤りの内容を記載した「更正の請求書」を税務署長に提出します。税務署ではその内容の
  検討をして、納め過ぎの税金がある等と認めた場合には、更正の請求をした人にその内容を
  通知し、税金を還付します。平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税の
  更正の請求ができる期間は、法定申告期限から5年以内です。
 ②納める税金が少なかったときなど
  誤った内容を訂正するための修正申告を行います。新たに納める税金は、修正申告書を提出
  する日が納期限となります。この場合、法定納期限の翌日から納付の日までの延滞税を
  合わせて納付する必要があります。

       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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