事務所便り

2013年 11月号


   ● 税  務
 ― 消費税の転嫁対策 事業者ができる行為できない行為

     来年4月からの消費税率引き上げに際し、消費税の円滑・適正な転嫁ができるように、「消
    費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別
    措置法」(転嫁対策特別措置法)がこの春に成立し、すでに本年10月1日から施行されてい
    ます。そこで、消費税率引き上げに際し事業者が注意すべきポイントを整理してみました。
     なお、転嫁対策特別措置法は、平成29年3月31日限りで効力を失います。
    
1 消費税の転嫁拒否等行為の禁止
       スーパーマーケット等の大型小売店が、その立場を利用して納入業者に対して、商品価
      格への消費税率引き上げ分の転嫁を認めない場合、納入業者の経営が圧迫されてしまいま
      す。そこで、消費税の円滑な転嫁のため、減額や買いたたき等、禁止される行為が規定さ
      れています。
     (1) 法律の対象となる事業者
      〈特定事業者〉
      ① 大規模小売事業者
      ② 特定供給事業者から継続して商品又は役務の供給を受ける法人である事業者
      〈特定供給事業者〉
      ① 大規模小売事業者に継続して商品又は役務の供給する事業者
      ② 資本金等の額が3億円以下である事業者
      ③ 個人事業者等
     (2) 特定事業者の遵守事項
       特定事業者は、特定供給事業者に対し、以下の行為を行ってはいけません。
      ① 減額・買いたたき
       ・商品又は役務の対価の額を事後的に減額することにより、消費税の転嫁を拒否すること
       ・商品又は役務の対価の額を通常支払われる対価に比べて低く定めることにより、消費税
        の転嫁を拒否すること
      ② 購入強制・役務の利用強制、不当な利益提供の強制
       ・消費税の転嫁に応じることと引換えに商品を購入させ、又は役務を利用させること
       ・消費税の転嫁に応じることと引換えに金銭・役務その他の経済上の利益を提供させる
        こと
      ③ 税抜き価格での交渉の拒否
       ・商品又は役務の対価に係る交渉において消費税抜き価格を用いる旨の申出拒むこと
      ④ 報復行為
       ・特定供給事業者が公正取引委員会等に転嫁拒否等の行為に該当する事実を知らせたこ
        とを理由として、取引の数量を減じたり、取引を停止するなど、その他不利益な取扱
        いをするこ
     (3) 転嫁拒否等の行為に対する検査・指導等
       特定事業者に対して、公正取引委員会、主務大臣、中小企業長官は、報告徴収、立入検
      査を行います。また、違反行為を防止又は是正するために必要な指導・助言を行います。
      違反行為があると認められるときは、特定事業者に対して、速やかに消費税の適正な転嫁
      に応じることその他必要な措置をとるよう勧告し、その旨が公表されます。
    
    
2 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置
     (1) 制度の趣旨
       事業者が消費税に関するような形で安売りの宣伝や広告を行うことを禁止します。
     (2) 事業者の遵守事項
       消費税の転嫁を阻害する以下の表示をしてはなりません。
      ① 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示…「消費税は転嫁しません」、「消
       費税は当店が負担しています」等
      ② 取引の相手方が負担すべき消費税を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との
       関連を明示しているもの…「消費税率上昇分値引きします」等
      ③ 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって②に掲げ
       る表示に準ずるもの…「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します」
       等
       なお、「消費税」といった文言を含まない表現については、宣伝や広告の表示全体から
      消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、禁止される表示には該当しま
      せん。
       ただし、「消費税」といった文言を含まない表現であつても、「増税分3%値下げ」、
      「税率上げ対策、8%還元セール」など、増税や税といった言葉を使って実質的に消費税
      分を値引きする等の趣旨の宣伝や広告を行うことは、通常、禁止される表示に該当します。
       一方、「消費税」といった文言を含む表現であっても、消費税分を値引きする等の宣伝
      や広告でなければ禁止されることはありません。たとえば、「毎月20日は全品5%割引
      セール(なお、4月1日から消費税率が8%になります)」との表示自体では直ちに禁止
      されるものではありません。
 
    3 価格の表示に関する特別措置
     (1) 制度の趣旨
       事業者の事務負担に配慮した措置です。
     (2) 価格の表示に関する特別措置
      ① 表示価格が税込価格であると認識されないための措置を講じているときに限り、税込
       価格を表示することを要しません(総額表示義務の特例措置)。
      ② ①により税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示する
       よう努めなければなりません。
      ③ 事業者は、税込価格を表示する場合に、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があ
       るときは、税込価格に併せて、税抜価格又は消費税の額を表示するものとされます。
        
         表示価格が税込価格であると誤認されないための措置
          商品等の価格を税抜価格のみで表示する場合、例えば以下のような表示が
         誤認防止措置に該当します。
         【税抜価格であることの明示例】
         (1) ○○○円(税抜き)
         (2) ○○○円(税抜価格)
         (3) ○○○円(税別)
         (4) ○○○円(税別価格)
         (5) ○○○円(本体)
         (6) ○○○円(本体価格)
         (7) ○○○円 +税
         (8) ○○○円 +消費税

    4 消費税の転嫁及び表示の方法の法定に係る共同行為に関する特別措置
       公正取引委員会に届け出ることにより、事業者、事業者団体が行う転嫁カルテル及び表示
      カルテルは、独占禁止法の適用除外とされます。
      ◎ 転嫁カルテル(転嫁の方法の決定に係る共同行為)
        各事業者がそれぞれ自主的に定めている本体価格に消費税額分を上乗せする決定や、消
       費税率引き上げ分を上乗せした結果、計算上生じる端数処理の方法(切上げ、切捨て、四
       捨五入等)の決定などは、独占禁止法の適用除外となります。
        ただし、引き上げ後の価格自体を統一する決定は、認められません。
      ◎ 表示カルテル(表示の決定に係る共同行為)
        たとえば、消費税率引き上げ後の価格の表示方法を、①税込価格と消費税額を並べて表
       示すること、②税込価格と税抜価格を並べて表示することの決定や、③個々の値札に、税
       抜価格を表示した上、「+税」と表示する旨の決定等があります。

       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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