事務所便り

2013年 9月号


   ● 税  務
 ― -金融・証券税制の改正ポイント

     金融所得課税の一体化のための改正のほか、少額投資非課税制度(NISA)の拡充などが図ら
    れる一方、現行の証券税制の軽減税率は平成25年末で廃止されます。これらの改正ポイント
    を整理してみます。

   
1 証券税制10%の軽減税率の廃止
      当初、平成20年12月末及び平成21年3月末で廃止される予定だった上場株式等に係
     る配当及び譲渡等の10%軽減税率(所得税7%、住民税3%)は、延長に次ぐ延長を重ね
     平成25年12月31日まで適用されます。
      この軽減税率は、平成25年12月31日で廃止され、廃止後の税率は20%(所得税
     15%、住民税5%)となります。
      なお、所得税部分には、復興特別所得税が別途課税されるため、源泉徴収に係る税率は、
     20.315%(所得税15.315%、住民税5%)となります。

   2 NISA

      金融所得課税の一体化の取り組みの中で、個人の株式市場への参加を促進する観点から
     創設された制度で、少額の上場株式等への投資を非課税にするものです。イギリスのISA
     (個人貯蓄口座)を参考にして作られたことから、「日本版ISA」(NISA)と呼ばれ
     ています。
      平成22年度税制改正の際に創設されましたが、上場株式等の配当・譲渡等の軽減税率の
     終了後に施行される予定であったため、軽減税率終了後の平成26年1月1日以降に導入さ
     れます。
      この
NISAが、平成25年度税制改正により、次のように大幅に拡充されています。
       (1) 非課税口座開設期間
          非課税口座を開設できる期間は、平成26年1月1日から28年12月31日までの3年間とされて
         いましたが、35年12月31日までの10年間に拡充されました。
          非課税口座では、毎年非課税管理勘定を設定して、年間の合計100万円以下の上場株式等を
         受け入れることができます。
       (2) 非課税期間
          非課税管理勘定に受け入れられた株式については、勘定設定日から同日の属する年の1月1日
         以後5年以内に支払を受ける配当等、5年以内にその株式等を譲渡した場合の譲渡益がそれぞれ
         非課税とされます。
       (3) 受け入れ可能株式等
          非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等は、その非課税口座を開設した金融商品
         取引業者等を通じて新たに取得した上場株式等とその非課税口座に係る他の年分の非課税管理
         勘定から移管される上場株式等です。
          したがって、5年間の非課税期間を経過した年分の非課税管理勘定株式を受け入れて、それから
         さらに5年間非課税の適用を受けることが可能です。
       (4) 手続き
          非課税の適用を受けるためには、非課税口座を開設する金融商品取引業者等の営業所を通じて
         税務署長に対して「非課税適用確認書」の交付を申請する必要があります。
          非課税適用確認書には、下表の勘定設定期間に応じた基準日における住所等が記載されること
         になっています。

   3 金融所得課税の一体化

         金融所得課税の一体化のために、次のような課税方法の改正が行われ、平成28年1月1日から
        適用されます。
       (1) 特定公社債等
          国債や地方債などの特定公社債、公募公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の公募
         投資信託の受益権、特定目的信託の社債的受益権で公募のもの(「特定公社債等」という)につい
         て、その利子等が源泉分離課税の対象から除外され、原則として20%の税率による申告分離課
         税とされます。この利子等については、確定申告をしないことが選択できます。
          特定公社債等を特定口座に受け入れることが可能となり、口座内での損益通算もできます。
       (2) 一般公社債等
          特定公社債等以外の一般公社債等の利子は、現行の20%の税率による源泉分離課税が維持
         されます。
          一般公社債等を譲渡した場合には、非課税の対象から除外され、20%の税率による申告分離
         課税の対象とされます。
       (3) 割引債
          割引債を含む公社債の譲渡所得等を20%の税率による申告分離課税とすることに加えて割引
         債の償還差益についても譲渡所得等として20%の税率による申告分離課税とされます。
          また、発行時の18%源泉徴収を適用しないこととされ、償還時に20%の税率で源泉徴収する
         仕組みに改められます。
       (4) 株式等の譲渡所得等の分離課税の改組と通算
          株式等の譲渡所得等は、上場株式に係るものと非上場株式に係るものを区分し、公社債等の
         譲渡所得等と合わせて、①特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得の分離課税、②一般
         公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税に改組されます。
          上場株式の譲渡損益と非上場株式の譲渡損益の相互の通算ができなくなります。 

○NISAの仕組み
基準設定期間 基準日
平成26年1月1日から平成29年12月31日 平成25年1月1日
平成30年1月1日から平成33年12月31日 平成29年1月1日
平成34年1月1日から平成35年12月31日 平成33年1月1日
1.非課税対象 非課税口座内の少額上場株式等の配当、譲渡益等
2.非課税投資額 口座開設年に、①新規投資額および②継続適用する上場株式等
の時価の合計額で100万円を上限(未使用枠は翌年以降繰越不可)
3.非課税投資総額 最大500万円(100万円×5年間)
4.保有期間 最長5年間、途中売却は自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)
5.口座開設数 年間1人1口座(毎年新たな口座開設は不要)
6.開設者 居住者等(その年1月1日において満20歳以上である者)
7.口座開設期間 平成26年~35年(10年間)
       

所長 堀 裕彦 中小企業庁“ちいさな企業

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